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見るとやるとじゃ大違いだったこと:肛門科と外科では考え方が異なる。
癌の手術と痔の手術では、考え方がかなり異なる。
数年前に、とある有名な大腸肛門科専門病院を見学させていただいた。
その時そこの院長先生に言われた印象的な言葉がある。
いくつか挙げてみると・・・
「肛門科医の手術は、外科医の手術とは違う。分かっているか?」
「お前が外科医なのか、肛門科医なのか、見る人が見れば分かる」
「外科医の手術を続けていてはならない。肛門科医の手術ができるようになれ・・・」 etc...
言われた当時はその意味がよく理解できなかったが、最近になって「先生はこのことをおっしゃていたのではないか?」と思うようになっている(間違っているかもしれないが)。
癌に代表される外科の手術は、癌をすべて取り除いて命を救うのが目的となる。
癌に切り込んで、癌の一部をとり残すようなことがあれば、癌は再発して致命的となる。
だから癌の手術は、癌を中心としてできるだけ一括で大きく取り除くのが原則となる。
命を救うためには、多少の機能を犠牲にせざるを得ないこともある。
いっぽう痔の手術で最も重視されるのは、機能を温存することである。
切りすぎた肛門は元に戻らない。
切りすぎて狭くなったりゆるくなったりした肛門は修復するのが大変だし、誤って傷つけた筋肉は元に戻ることはない。
逆に痔を取り残しても命にかかわることはないし、極端な話、再発したらまた手術すればよい。
たとえば痔核の手術の際には、「取り過ぎるとダメージが残りそうな場合には、痔核の一部をあえて残す」というようなことがむしろ普通に行われている。
外科医は「病気(癌)を取り残さないように」ということを念頭に置いて手術を進めていくが、肛門科医は「肛門の機能を傷つけない」ということを念頭に置いて手術を進めていくわけである。
痔の手術で「病気(痔)を取り残さないように」というスタンスを続けていると、いずれ肛門に取り返しのつかないダメージを与えてしまいかねない。
長期的には外科医と肛門科医の間には、手術成績に大きな差が生じることになる。
考えてみれば、この院長先生の言われたことはたしかに理にかなっている。
でも大半の外科医は、「手術では病気を完全に取り除かなければならない」という思考が身についているので、はじめは肛門科流の考え方に戸惑うことがある。
でも、「外科流」の思考回路のまま痔の手術を続けていってはならない。いずれ壁に突き当たることになる・・・
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