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見るとやるとじゃ大違いだったこと:出血しやすい
肛門は血管が豊富な臓器であるため、手術の際に切る層を間違えると多量に出血する。
(これは肛門科の手術に限らず、どの領域の手術であっても同じだが)
手術を進めていく際には、正しい剥離の「層」が存在する。
この正しい層を見極めて、ここを正確に切りすすんでいけるかどうかが、手術の巧拙を大きく左右する。
肛門科の手術に慣れないうちは、たびたび間違った層に切り込んでしまう。
その結果出血が多くなり、止血にかなりの時間を要することになる。
出血した場合には電気メスで焼いて止血するのだが、焼きすぎると火傷になるので術後の痛みが強くなり、治りも悪くなり、腫れやすくなる。
さらに肛門の機能に重要な「クッション」や「筋肉」まで傷つけてしまうと、治ったあとも肛門に硬くて深い傷跡が残ることもある。
いっぽう経験を積んでいくにつれ、正しい層を見極めて正確に切っていくことが可能となるので、ほとんど出血しなくなる。
間違ったところを傷つけず、電気メスも最小限にしか使用しないので、痛みが軽く、治りも早くなり、術後のダメージもほとんど起こらなくなる。
肛門科の手術では、正確な技術で正しい層を切っていく限り出血で苦労することは少ない。
ただし正確な手術ができないようだと、出血が多くなり止血にてこずることになる。
レーザーメスを使うと、間違った層を切っても出血で苦労することがほとんどなくなる。
レーザーを使って手術すると、出血が少なくて確かに手術は楽である。
でもレーザーに頼ってしまうと、間違った層を切っても出血しないので、それに気づかないことになる。
だからいつまでも技量は向上せず、ダメージの多い手術を続けることになってしまう。
専門病院で十分な肛門科手術の修練を積み、正しい層で手術を行える医師が、レーザーのメリットとデメリットを知り尽くした上で使っているのなら、おそらくレーザーは有用な器具となるのかもしれない。
しかし十分な修練を積んでいない医師が、自分の未熟さをごまかすためにレーザーを使っているとしたらどうだろう?
私の所属する病院では、レーザーメスを使用しない方針を貫いている。
かつて一時期試してみたこともあったが、現在ではレーザーは倉庫の奥に眠っている。
これはわれわれの病院に限った話ではない。
全国に名の通った一流の肛門外科医で、レーザー主体で手術を行っている人は、自分の知る限りたぶんいないと思う。
実際自分はこれまでに全国各地の一流と目される大腸肛門科専門病院をあちこち回って学んできたが、これらの施設でレーザーを使用しているところは皆無であった。
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