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肛門科手術の修行における「守・破・離」
新しい技術を完全コピーするときには、注意すべきポイントが存在すると思っている。
それは、「理屈を完全に理解しないうちは、自己流のアレンジを加えない方がよい」ということである。
世阿弥の「守・破・離」で言えば、「守」もおぼつかないのに、「破」にいってはならないということである。
たとえば自分が初心者の頃に上級者の前立ちを行っていて、「上級者はここのところをA方式でやっているけれども、ここはB方式の方がうまくいくのではないか?」と思うことがたびたびあった。
でも、完全コピーせずに一部だけ自分流にアレンジを加えてみても、多くの場合良い結果は得られない。
上級者はまず間違いなく、自分が試そうとしたB方式はとっくに経験済みであり、そのやり方はうまくいかないのを知っている。
それを経験した上で、初心者には最善手ではないように思えるA方式をあえて採用しているのである。
だからどの分野の技術であっても、修行をはじめてから一定の期間は、愚直に「守」をつらぬくのが得策だと自分は思っている。
「守」をつらぬいて一定の蓄積が得られると、次は否応なく「破」に足を踏み入れる時期が訪れる。
本格的に肛門科手術を手がけるようになり、毎年500例近い手術の術者をつとめると、5年もすればあらゆるトラブルを何回も経験し、そのトラブルへの対処法を自分なりに確立するようになる。
どの状況でトラブルが起こりやすいかとか、どうすればそれを避けられるかということも分かってくるようになる。
初心者の頃にはよくわからなかった上司の手術の理論的背景も、この頃にはかなり分かってくるようになる。
そしてこの頃になると、国内で発行されている肛門科関係の手術書や臨床雑誌の大半を読みつくしてしまい、新たに読むものがなくなってくる。
(なぜか英語の手術書は学問チックでどれも同じようなものが多く、手術の技術面における記述が貧弱で、知識を増やすには有効でも技術向上にはあまり役に立たない気がするのは私だけだろうか)
これまでと同じ修行を続けるだけでは、だんだん頭打ちになってくるわけである。
この段階に至ってはじめて、「守」から脱却するようになる。
1 肛門科手術の修行は、他の分野とはすこし異なるところがある|2 修行を始めたばかりの医師は、まず前立ちからスタートする|3 最高峰のアドバイス|4 肛門科手術の修行における「守・破・離」|5 このアドバイスは、一流の職人の世界観と通じるものがあると思う
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