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●深部複雑痔ろう(III型痔ろう・IV型痔ろう)を変形や機能障害なく、かつ再発させずに治す


III型痔ろう・IV型痔ろうは、「深部複雑痔ろう」と呼ばれます。

このタイプの痔ろうは深い位置にあり、複雑な構造をしているため、I型やII型の痔ろうと比べると治療が難しく、適切に対応できるようになるには一定の経験を要します。

特にIV型痔ろうの手術などは、肛門科領域の手術の中でももっとも難度が高いものの一つと言っていいと思います。
このタイプの痔ろうを治せる病院はごく一部しかありません。


かつてわれわれの施設では、この深部複雑痔ろうに対して「Hanley法」か「括約筋温存術」の二つの術式のうちいずれかが行われていました。

Hanley法とは、肛門後方を大きく切開する術式であり、切開開放術と原理は同じです。
この術式は深部複雑痔ろうの術式の中ではもっとも簡単確実な方法であり、実際にはこの術式でも肛門の変形や機能障害で悩まされることはあまりありません。

でも過去にこの術式で痔ろうの手術を受けた方の肛門を見てみると、鍵穴状に肛門が凹んだ形の変形をきたしているのを見かけることがあります。

われわれの施設では年間100例近くの深部複雑痔ろうの手術を行っているので、すべての患者さんにHanley法を行うと、おそらく一定の頻度で肛門変形に悩む患者さんが出ることが予想されました。

だからこのHanley法は、「深部複雑痔ろうの第一選択の術式にしてはいけない。Hanley法はあくまでも他の術式で治せない痔ろうに限定すべきだ」とわれわれは考えました。
(現在われわれの施設では、Hanley法は極端に複雑な痔ろうや、再発を繰り返す痔ろうにしか行っていません)


・・・Hanley法が第一選択となりえないのなら、括約筋温存術はどうでしょうか?

この括約筋温存術は、うまく決まれば変形のリスクも最小限で、短期間で治るという長所があります。

でもこの術式は手技が難しいため熟練者向きであり、その上かなり高頻度で再発するという難点があります。
さらにこの術式は、ろう管が完成していない膿瘍期の痔ろうには行えないという制約もあります。

外科の標準術式とは、「一定の経験を積めばだれでも行える」という条件を満たす必要があります。
この温存術のように難度が高く、一部の熟練者しか行わないような術式も、標準術式とするのは難しいとわれわれは考えました。


Hanley法も括約筋温存術も、標準術式として採用するには難点がある。それならどうしたらよいか・・・

いろいろ考えた結果、当時一部の医師しか手掛けていなかった「シートン法」を当院でも採用しようということになり、私が担当となって深部複雑痔ろうに対するシートン法に本格的に取り組むことになりました。7〜8年ほど前の話です。

このシートン法、実際に始めてみたら思ったより好印象でした。
治るまでに時間がかかるという難点はあるものの、うまくやれば肛門の変形もなく、温存術より再発もずっとすくないという利点があります。

このシートン法に本格的に取り組んで数年が経過し、症例数が蓄積されるにつれて、当然一定の頻度で再発に遭遇することになります(温存術の再発率よりだいぶ低いのですが)。

はじめは「なぜ再発したのか」という、再発の原因が良くわかりませんでした。
再発の原因をあれこれ考え抜き、文献を調べまくり、仮説検証を繰り返し・・・何年も手探りの日々が続きました。

当時痔ろう関係の文献50本以上(和書も洋書も)に目を通したと思うのですが、再発の原因について言及している文献はいくつかありました。でも「どうしたらその再発を回避できるのか」という具体的な手術のコツに言及している文献はありませんでした。

「だったら再発させない手術手順マニュアルを自分で確立するしかない」と覚悟して、一人一人の症例について気づいたポイントをメモ帳に詳細に書き込む作業を始めました。
いまではこのメモ帳は、深部複雑痔ろうのテーマだけで電話帳くらいの厚さになっています。


・・・何年も暗中模索を続けた結果、あるとき急に視界が開ける瞬間が訪れました。

術者として200例近い深部複雑痔ろうの執刀経験を重ね、その術後経過をすべて自分で観察し、さらに他の医師が手掛けた再発症例も色々経験した結果、「再発には一定のパターンがあるんじゃないか」ということが見えてきたのです。

現在そのパターンは4つあることが分かっています。
このパターン認識にもとづいた再発予防策を自分なりに確立し、具体的な手術マニュアルに落とし込んで現在に至ります。


下のスライドで示す4つの再発パターンのうち、現在3つはほぼ克服できたと言えます。(下のイラストで言えば@AC)

残る一つの再発パターンはまだ克服できたとは言えず、どんなに完璧にやったつもりでもときどきこのパターンの再発に遭遇してしまいます(下のイラストで言えばB)。まだ術式改良の余地があるということでしょう。


私がこのシートン法を手がけた当初は、再発率が10%を超えていました。
ひとつひとつ術式改良を重ねていった結果、現在では再発率は3〜4%と、以前に比べると著明な改善を見ています。

今後もライフワークのひとつとして、再発0を目指して術式の改良を続けていこうと思います。
(実際には再発0を達成している医師はいないのですが・・・)






































































































































































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