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手も足も出ない肛門科の病気とは その1
肛門科の病気はほとんどが良性である。
癌の治療とちがって、どの病気も正しく対処すれば完治させられるか、完治させられないまでも症状を大幅に改善させることができることが多い。
ただし肛門科で遭遇するいろいろな病気のなかには、手も足もでないものもある。
そのひとつが、「肛門のにおいが気になる」という訴えで来院したケースである。
「肛門のにおいが気になる」といって肛門科を受診する人がときどきいる。
「どうしてにおっていると思うんですか?」と聞くと、だいたい「周りの人の態度をみればわかる」という答えが返ってくる。
実際診察してみても、もちろん肛門に異臭を認めることはない。
御存じのごとく、これは肛門科の病気ではなく、心療内科や精神科領域の病気である(自己臭症という)。
この訴えで患者さんが受診してきた場合、私はいまだにどう対処したらいいか分からない。
肛門には異常がないからといって、心療内科や精神科の受診をすすめてもなかなか納得してくれない。
そうかといって軟膏などを処方してごまかそうとしても、良くならないと言ってまたやってきて同じ訴えが続く。
こちらが「においませんよ」と言っても、相手は納得してくれることはない。
「におわない」ということを相手に納得してもらうのをあきらめて、「たしかににおうのかもしれないけど、私がたまたま気づかないんでしょうね」と相手を理解するような態度で接すると、相手もそれなりに満足してその場はしのげるということだけは経験上知っている。
でもまた数日後に「今日はにおっているのが分かってもらえると思う」などと言いながらやってきて、同じ訴えを聞かされることになるので何の解決にもならない。
患者さんはその後も何回か通院してくるが、同じやりとりを繰り返すうちにそのうち来なくなる。
どこに行ったかは分からないが、自覚症状が改善しない(改善するわけないのだが)ので満足できず、他の肛門科を受診しているのだろう。
つづく・・・
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