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直腸脱の術式を比較する

・直腸脱の手術は、経肛門的手術と経腹的手術に分けられる。
・経肛門的手術とは、おしり側から行う手術のこと。
・経腹的手術とは、おなかの中から行う手術のこと。
・経肛門的手術は腰椎麻酔や局所麻酔で行えるので、高齢者に行われることが多い。
・経腹的手術は成績はよいが全身麻酔が必要なので、若い人に行われることが多い。


長所 短所

デロルメ法
(経肛門的手術)

我々の施設では、「高齢者」で「大きく脱出しない直腸脱」に対してもっともよく行われる方法。


全身麻酔が不要なので、リスクが高い高齢者によく行われる

再発しても再度同じ術式を行うことができる


同程度の手間と侵襲(ダメージ)で行える三輪-Gant法とくらべると、再発率が明らかに低いため、われわれの施設では10年以上前から三輪-Gant法からこのデロルメ法へ移行した。


大きく脱出する直腸脱をこれで治すのは難しい。

そのため通常それほど大きく脱出しない直腸脱(10cm以下くらい)に行われる。

かなり技術を要する術式なので、全国的にも行っている病院は少ない。



三輪-Gant法

(経肛門的手術)

現在全国で最も広く行われている、ほぼ国内限定の術式。

全身麻酔が不要。

日本でもっともさかんに行われている方法。

再発しても繰り返し行うことができる。


文献を見る限り、この術式は欧米では評価されておらず、まったく行われていない様子。
(私の知る限り)日本だけで行われている術式。


(同程度の手間とダメージで行える)デロルメ法とくらべると再発率が高いので、現在我々の施設ではデロルメ法にとってかわられた。

現在われわれの施設で行われることはなくなった術式。


ティールシュ法

(経肛門的手術)

通常デロルメ法や三輪-Gant法と同時に行われる方法。


全身麻酔が不要。


他の術式(デロルメ法や三輪-Gant法)と合わせて行うことができる。



通常直腸脱に対してこれだけ行うことはない。


他の術式(デロルメ法や三輪-Gant法)の補助的な役割として、同時に行われるケースがほとんど。


PPH

(経肛門的手術)

不完全直腸脱(直腸粘膜脱)によく用いられる。


全身麻酔が不要。

器械を用いる方法なので、うまく決まればきれいに痛みなく治せる。


通常不完全直腸脱(直腸粘膜脱)の治療にもちいられる。


完全直腸脱はこれでは治せない。


アルトマイヤー法
(経肛門的手術)

大きく脱出する直腸脱や、デロルメ法/三輪-Gant法を行っても再発を繰り返すケースで、全身麻酔のリスクも高い高齢者に行われることがほとんど。


全身麻酔が不要。

デロルメ法では治せないような、大きく脱出する直腸脱にも対応できる。


デロルメ法や三輪-Gant法などで再発を繰り返すケースにも対応できる。

肛門がゆるい症例でも、肛門挙筋形成術を付加することで、肛門機能をある程度改善させやすい。

大きく脱出して戻らなくなった直腸脱(かんとん直腸脱)を治すには、この術式しかない。

われわれの施設では、「経肛門的手術の最後の手段」的な位置づけ。



経肛門的手術のなかでは比較的侵襲(ダメージ)が大きい手術であり、縫合不全(縫いあわせた腸がもれること)のリスクがわずかにある。


技術を要する術式なので、全国的にも行っている病院は少ない。


直腸固定術

(経腹的手術)

全身麻酔のリスクが低い若い人に対して行われることが多い。


すべての術式の中でもっとも成績が良い。

大きく脱出する直腸脱でも対応できる。

デロルメ法や三輪-Gant法などで再発を繰り返すケースにも対応できる。


全身麻酔が必要で、おなかの中から行う手術なので、高齢者に行われることは少ない。
(高齢者ではまずデロルメ法やアルトマイヤー法が考慮されることがふつう)

参考:

硬化療法
(経肛門的手術)


全身麻酔が不要。

中国では以前からさかんに行われている方法。


うまくいけば、切らずに注射だけで治すことが可能となると考えられている。



日本ではまだ実績がない方法で、健康保険の適応となっていない。


われわれの施設における、おおまかな術式の選択基準


不完全直腸脱(年齢に関係なく)
・PPHや硬化療法(ジオン)

完全直腸脱で若い人
・直腸固定術

完全直腸脱で高齢者
・あまり大きく脱出しないものはデロルメ法(ティールシュ法を加えることもある)。
・大きく脱出するものや再発を繰り返すものはアルトマイヤー法(全身麻酔がかけられそうであれば直腸固定術を行うこともある)



(解説)

直腸脱の手術には、これまでにじつにいろいろな方法があったそうです(数十種類はあるそうです)。
これは、決定版となる術式がなかなか確立されなかったことを意味します。

この中で、長い年月をかけて生き残ったものが、ここに示した数種類の術式です。

実際には、ここにあげたすべての術式を行える病院は、ごく一部の先進的な大腸肛門科専門病院に限られているのが現状です。
おそらく全国にも数えるほどしかないでしょう。
(大半の病院では、三輪-Gant法とティールシュ法くらいしか行っていません)

直腸脱の治療は、今後も大きく変わっていくことが予想されます。





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